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抗てんかん薬の副作用

内容

はじめに

 抗てんかん薬による治療をお勧めすると、薬の副作用をおそれ、服薬を躊躇される方がときどきみえます。

 たしかに、薬に副作用がつきものです。しかも、てんかん治療の場合、年単位の抗てんかん薬服用がほとんどですから、副作用を心配されるのも無理はありません。

 しかし、治療をはじめる前から副作用のことばかり心配するのも、ちょっと、考えものです。

 なるほど、薬は一種の「毒」です。少なくとも、生体はそのように認識しています。その証拠に、肝臓は薬をなんとか「解毒」しようとします。

 しかし、一方で、薬はそうした生体防御をくぐり抜け、何らかの効果、薬理作用を発揮します。そして、一般的には、薬理作用による利点の方が副作用による欠点よりも上回ります。薬の効果によって病状が改善し、生活の質(生命予後も含め)も向上、一方で、副作用は無視できるほど少ない、といった場合がほとんどです。だからこそ、多くの薬が治療薬として生き延びてきているのです。

 しかし、ともかくも、よく知らないことは、必要以上に怖くみえてしまうものです。「敵」の正体が明らかになれば、適切な判断も容易となります。そこで、以下に、抗てんかん薬の副作用のあらましをお話ししてみたいと思います。

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概要

 てんかんの治療においては、数年から、ときには数十年にわたって抗てんかん薬を飲み続けることがめずらしくありません。ですから、副作用についても、服薬開始後すぐに現れるもののみならず、時を経て現れてくるものにも留意しなくてはなりません。

しかし、薬の副作用というのは、無数にあります。表に抗てんかん薬の主な副作用をお示ししましたが、ここに書かれているのは、副作用のほんの一部にすぎません。抗てんかん薬に限りませんが、こうした薬の副作用を全て理解し,記憶しておくことは、医者にとっても、不可能です。また、最近、市場にでたばかりの薬では、治験段階では認められていなかった副作用がその後みつかる可能性もあります。薬の副作用を完全に把握することはもともとできないのです。ですから、薬を飲んでいて、おかしい、と感じたらどんなことでも結構です。担当医に相談してください。「この薬は自分に合わない」、「この薬は気に入らない」といった、あいまいで、ささいなことでもかまいません。そうした訴えが、薬の副作用をみつけだす重要な第一歩になります。

 しかし、いうまでもありませんが、薬を飲めば副作用が必ずでるわけではありません。特異反応は、ごく一部の人にだけみられるだけですし、一般的副作用も、多くは、薬を増量することによってはじめて出現する副作用です。減量によって消失することがほとんどです。少量の抗てんかん薬で発作がコントロールされれば、副作用とは無縁で何年も治療継続可能です。

 ただし、抗てんかん薬による発作抑制率はせいぜい8割程度です。残りの2割の方では残念ながら薬物治療による完全な発作コントロールが期待できません。そのような難治例では、薬の副作用と治療効果の狭間で悩むことになります。

 そのような難治てんかんにたいし、2つの対応の仕方が考えられます。一つは、どうせ効かないのであれば、副作用もあるので、一切薬を服用しないという行き方です。まれにですが、実際、そのように望まれる患者さんや保護者がみえます。

 しかし、発作を完全にコントロールできなくても、薬は発作をある程度は抑制します。まるで効いていないということは、まず、ありません。そこで、完全に発作を止めることはできなくとも、ある程度の薬効を期待して、とりあえず、飲んでおこう、というのがもう一つのやり方です。

 おそらく、ほとんどの場合、後者が選択されているだろうと思います。

 しかし、そうした状況では、さまざまな要因に目配りする必要があります。とくに、どこまで副作用が許容されるかの判断が重要な鍵をにぎります。

 たとえば、ある程度副作用には目をつぶって、発作抑制を優先することがあります。重積傾向のあるてんかん発作が頻発し、生命が脅かされかねない場合です。重症乳児ミオクロニーてんかんなどではそうした状況が起こりえます。その場合には、ある程度の副作用は許容されるでしょう。

 そういった極端な場合は、むしろ、わかりやすくていいのですが、通常は、もっと微妙な判断が要求されます。いくら難治発作があっても、普通は、薬の副作用で日常生活が大きくかき乱され、成長が阻害されるようなことは避けなければなりません。発作はコントロールされたが薬の副作用で一日中眠ってばかりいるというのでは、治療の名に値しません.しかし、一方で、発作も日常生活や成長に多大な影響を及ぼします。結局、発作と副作用という性質の異なるものを両睨みすることになります。正解はありません。正解のない中で、患者さんや保護者の方とご相談しながら、治療方針を立てるしかないのです。

 しかし、おそらくは、ある程度の発作は容認し、目立った副作用がない状態を保つようにしていくことが,実際の臨床の場面では、多いだろうと思います。もちろん、その場合でも、新しい薬、新しい治療法はつねに視野に入れて、よりよい発作コントロール,出来得れば発作消失を目指すべきでしょう。

表1 抗てんかん薬の代表的副作用

抗てんかん薬
(略語)
商品名 一般的副作用 特異反応 けいれん誘発
フェノバルビタール
(PB)
フェノバール
ルミナール
ワコビタール座剤
ルピアール座剤
多動、頭痛、鎮静、嘔気、ふらつき
易刺激性・多動(小児)、譫妄(老人)
行動異常、知的低下、
くる病(ビタミンD代謝亢進)
葉酸欠乏(巨赤芽球性貧血)
発疹、
Stevens-Johnson症候群
関節炎
欠神発作
(過量投与時)
プリミドン
(PRM)
マイソリン
プリムロン
眠気、幻暈、知的低下、ふらつき 発疹、関節炎、
Stevens-Johnson症候群
欠神発作
フェニトイン
(PHT)
アレビアチン
ヒダントール
ジフェニールヒダントイン
眼振、幻暈、嘔気、失調、振戦
小脳障害,結合織増生
(歯肉増殖、顔貌変形)
多毛、葉酸欠乏(巨赤芽球生貧血)
くる病(ビタミンD代謝亢進)
インシュリン分泌抑制(非ケトン性高血糖)

SLE様症状、血球減少、発疹、
Stevens-Johnson症候群
リンパ節腫脹

過量投与時発作激増、
まれに、ミオクロニー発作
欠神発作誘発
カルバマゼピン
(CBZ)
テグレトール
レキシン
眠気、複視、幻暈、嘔気、ふらつき
低ナトリウム血症
高コレステロール血症、不整脈
血球減少、発疹、
SLE様症状
Stevens-Johnson症候群
ミオクロニー発作
欠神発作
部分てんかんの発作誘発
ゾニサミド
(ZNM)
エクセグラン めまい,眠気、協調運動不全
腎臓結石、食欲不振、吐気,発汗減少
認知力低下、無気力、鬱、躁、幻覚
幻覚,皮膚掻痒感
発疹,血球減少 -
バルプロ酸
(VPA)
デパケン、エピレナート
バレリン、ハイセレニン
セレニカR
吐気、嘔吐、体重増加、回復性の脱毛
眠気,高アンモニア血症、血小板減少
振戦、肝機能異常
致死性肝障害、膵炎、脳症 複雑部分発作、
(陰性ミオクローヌス
(非てんかん性))
ギャバペンチン
(GBP)
ギャバペン 傾眠、めまい、頭痛、複視
悪心、倦怠感、体重増加
Stevens-Johnson症候群
急性腎上全
発作増悪
エトサクシミド
(ESM)
ザロンチン
エピレオプチマル
悪心、嘔吐、胃痛、頭痛
傾眠、興奮、しゃっくり、異常行動
再生上良性貧血、発疹、
Stevens-Johnson症候群
SLE様症状,
強直間代発作誘発
ラモトリジン
(LTG)
ラミクタール めまい、嘔気、頭痛、脱力
失調、嘔吐、眠気、振戦、消化上良
アレルギー性皮膚反応(発疹)
過敏性反応
てんかん発作回数増加
トピラマート
(TPM)
トピナ 眠気、めまい、認知機能低下
言語流暢性障害、異常感覚、腎結石
発汗減少、代謝性アシドーシス
うつ、体重減少
視力低下 -
ジアゼパム
(DZP)
セルシン
ソナコン
ホリゾン
ソナコン
ダイアップ座剤
眠気、異常行動、唾液分泌過剰
筋緊張低下、呼吸抑制・血圧低下(静脈投与)
ふらつき
まれ
(発疹,血小板減少など)
強直発作
ニトラゼパム
(NZP)
ペンザリン
ネルボン
眠気、異常行動、唾液分泌過剰
筋緊張低下、呼吸抑制・血圧低下
ふらつき
まれ
(発疹,血小板減少など)
強直発作
クロナゼパム
(NZP)
リボトリール
ランドセン
眠気、異常行動、唾液分泌過剰
筋緊張低下、呼吸抑制・血圧低下
ふらつき
まれ
(発疹,血小板減少など)
強直発作
クロバザム
(CLB)
マイスタン 眠気、異常行動、唾液分泌過剰
筋緊張低下、呼吸抑制・血圧低下
ふらつき
まれ
(発疹,血小板減少など)
強直発作
スルチアム
(ST)
オスポロット 眠気、食欲上振、しびれ
頭重、失調、過呼吸、腎結石
- -
アセタゾラム
(AZA)
ダイアモックス 多尿、口渇、脱力、幻暈
しびれ、頭痛、食欲上振、腎結石
電解質異常
- -
臭化カリウム
(KBr)
臭化カリウム 挫創、発疹、眠気、ふらつき
脱力、活動低下、食欲低下、下痢
頭痛、幻覚、昏迷、昏睡
- -

-:報告がないだけで,本当にないのかどうかは上明

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副作用の種類

 副作用は服用期間,服用量など、さまざまな側面を指標として分類がなされています。そうした分類によって薬の副作用を全てカバーできるという保証はありませんが、副作用を整理し、理解する上では便利なので、概略を述べます。

a.急性副作用と慢性副作用

 副作用は治療開始間もなく発現する急性のものと年余にわたって徐々に出現する慢性のものがあります。急性副作用は比較的気づきやすいですが、慢性のものは見逃されがちです。薬を開始してから数年たつと、症状が薬と結びつかなくなるからです。最初に、おかしいと思ったら何でもいいですから医者に相談してくださいと申しましたのも、この慢性副作用を見つけだすためです。まれですが、思いもかけない副作用が出現することがあるのです。

b.一般的副作用と個別的副作用

 副作用には、ある一定の条件下で誰にでも出現する一般的副作用と特定の人にだけ現れる個別的副作用があります。

1) 一般的副作用

 一般的副作用は、通常、服用量(血中濃度)と関連します。

 抗てんかん薬は何らかの形で神経細胞の活動を抑制したり変容させたりします。このため、抗てんかん作用に加え、「飛び火spill over」効果として抗てんかん薬が神経機能の変容をきたしてしまうことがあります。眠気、行動異常、性格変化、失調などがその代表的症状です。これらは典型的な用量依存性副作用で、一般的副作用の代表例です。血中濃度が治療域上限を超えると出現することが多く、前にも述べましたが、血中濃度を定期的に測定する意味はここにあります。ただし、神経症状以外の副作用は、血中濃度が治療域内でも出現することがあります。たとえば、パルプロ酸による食欲増進、体重増加、フェニトインによる歯肉増殖といった副作用です。

2) 個別的副作用

 個別的副作用は遺伝的素因よって出現するものと推定されています。しかし、正確な発症機序は解明されていません。いわゆる薬疹やスティーブンス・ジョンソン症候群(皮膚粘膜眼症候群:高熱とともに全身の皮膚に紅斑、水疱、表皮剥離、びらんが認められる重篤な疾患で、口唇、口腔、眼結膜、外陰部に高度のなどにも発赤、びらん、出血が認められることが少なくありません。組織学的には、皮膚や粘膜の表皮細胞が全層にわたって壊死を起こしており、中毒性皮膚壊死と呼ばれます。原因のほとんどが薬に対するアレルギーで、薬疹の最重症型です)などは代表例です。一種の「過敏反応」で、多くは、服用開始後、数週間以内に現れます。

 薬を飲み始めてしばらくしてから、皮膚に原因不明の発赤、発疹がでて、どんどん全身に広がっていくようなら、すぐに薬を中止し、なるべく早く受診してください(抗てんかん薬を急にやめると、それだけで、リバウンド(反跳)効果で、発作が誘発されることが薬によってはありますから、急激に断薬することはあまりやるべきではありません。しかし、薬疹の多くは飲み始めて1カ月以内に起きることが多いので、反跳現象を心配する必要はあまりありません)。

 無顆粒球症などの血球減少や肝機能障害も有効血中濃度内で服用量とは無関係にごく限られた一部の方にみられることがあります。この類の副作用は外から見ただけではわかりませんし、初期には、自覚症状もありません。血液検査で発見するしかありません。このため、抗てんかん薬の服用を開始すると、どうしても、定期的な血液検査が必要になります。

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薬物相互作用

 一種類の薬を?用しているときには何ともなかったのに、そこにもう一種類、新たな薬を追加すると、副作用が出現したり、発作コントロールが悪化したりすることがあります。

 こうしたことが薬の相互作用によって起きる場合もあります。

 抗てんかん薬の中には肝臓の酵素に影響をおよぼし,他の抗てんかん薬の代謝を早めたり、遅くしたりするものがあります。このために、薬の血中濃度、脳内濃度が増減します。そして、以前から?用していた抗てんかん薬の副作用を際だたせたり,発作を悪化させたりするのです.このように、新たな抗てんかん薬が追加する場合、相互作用による副作用や発作増加の可能性も念頭に置いておく必要があります.ただし、薬の相互作用は複雑で、一筋縄ではいかないことが少なくありません。なるべく、単独の薬を使い、複数の薬の併用(多剤併用)を避けるのは、ひとつは、このためです。

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疾患関連性副作用

 個別的副作用の特殊型として、ある特定の疾患に特異的に発生する副作用があります。抗てんかん薬による重症筋無力症の悪化などがその代表例です。しかし、なかでも、とくに注意すべき疾患は,急性間歇性ポリフィリアです。

 急性間欠性ポリフィリア(肝性ポリフィリア)はポリフィリア*ヘム合成経路酵素であるハイドロキシメチルビレン合成酵素欠?による常染色体優性遺伝疾患です。酵素活性が50%以下になると発症するといわれており、酵素誘導機能のある抗てんかん薬、向精神薬などが発病を誘発し、悪化させます。実際、20世紀に入って、抗てんかん薬,向精神薬が普及したため症状が顕在化した疾患とも推定され、「20世紀病《などとも呼ばれています。腹痛、嘔吐、便秘(ギュンターの3徴)などの消化器症状,末梢神経障害による四肢のしびれ、脱力および筋肉痛などの神経症状、上安、上眠、意識障害などの精神症状、高血圧、頻脈などの循環器症状などが周期的にみられます。ただし、症状が全て揃っていないことも少なくありません。

 腹痛などは、診察しても、あまり所見がなく、仮病じゃないかと疑われてしまうこともあります。このため,この病気を念頭に置かないと正確な診断にたどり着けない恐れがあります。抗てんかん薬や向精神薬を?用している患者が急性腹症や急性多発性末梢神経障害の症状を呈するばあいには、まず、この疾患を疑うべきです。しかし、診断がつけば、抗てんかん薬の変更などの対策によって、症状の出現をおさえることができます。まれな疾患ですが,医原性疾患であり、診断が遅れると呼吸麻痺で死亡することもあるので、つねに頭の片隅に入れておくべき疾患です。日本で使用可能な抗てんかん薬はほとんどがこの疾患の発病を誘発させる可能性があります。しかし、ニトラゼパムを除いたベンゾジアセピン系抗てんかん薬とバルプロ酸では症状が顕現しない場合があるので、この疾患にてんかんが合併している場合、とりあえずは、そうした薬剤を試すことになります。しかし、絶対的に安全な抗てんかん薬というと臭化カリウム(ブロム)しかありません。

図1 15歳女性 急性間歇性ポリフィリア

3歳時に強直間代発作があり、脳波で全般性棘徐波がみられたためVPAを投与された。その後、約1か月に1回、腹痛、便秘、嘔気、嘔吐、食欲低下、異常行動がみられるようになった。肝機能障害もみられたためVPAに代わってPHTが投与されたが、強直間代発作がみられたため、CBZが追加された。その後も周期的に腹部症状がみられ、さらに、筋力低下、関節痛も出現、腱反射が減弱した。尿中アミノレブリン酸(δ-ALA)、ポリフォビリノーゲン(PBG)が高値で急性間歇性ポリフィリアと診断された。ヘマチンを静注するとともに、PHT、CBZを中止、代わりにCZPを開始したところてんかん発作も消失、周期的な腹部症状、神経症状もみられなくなり、δ-ALA、PBGも正常化した。

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発作誘発

 抗てんかん薬は、てんかん発作を抑制する薬ですが、場合によっては、逆に、発作を誘発したり、悪化させたりすることがあります。

 なぜそんな現象が起きるのか.機序はよくわかっていません。しかし、現象面からは2種類に分けて考えることができます(Perruca et al. . Antiepileptic drugs as a cause of worsening seizures. Epilepsia 39 : 5-17, 1998)。

 一つは、特定の薬剤が特定のてんかん発作を増加させたり、特定のてんかん症候群を悪化させたりするものです。

 代表的なものが、クロナゼパムなどのベンゾジアセピン系抗てんかん薬による強直発作の誘発です。この発作誘発は、日中には気づかれなくても、睡眠中、開眼し呼吸が乱れるなどの軽度の体軸性強直発作が頻発することがあります。レンノックス-ガストー症候群などの症候全般てんかんによくみられ、発作に伴い、脳波上全般性律動性棘波が認められます。

 さらに、カルバマゼピンは特発全般てんかんにおいて欠神発作、ミオクロニー発作を誘発したり、特発性部分てんかんの発作を増加させたりすることがあります。カルバマゼピンほどではありませんが、フェニトインも欠神発作やミオクロニー発作をまれに誘発することが知られています。ミオクロニー発作誘発作用はガバペンチンでも報告されています。

 もう一つ、抗てんかん薬の過量投与でも発作が誘発されることがあります。たとえば、高濃度フェニトインは発作頻度を増加させることが報告されています。しかし、実際にはまれな現象のようです。

 このように抗てんかん薬で「逆説的に《発作が誘発されることがありますが、しかし、抗てんかん薬に関連する発作誘発でもっとも注意すべきは、何度も申していますように、フェノバルビタールやベンゾジアセピン系薬剤を急にやめてしまうことです。こうした離脱性発作は断酒時にも起こることが知られています。

 ついでながら、抗てんかん薬以外にも、さまざまな薬がてんかん発作を誘発したり、悪化させたりすることが知られていますので、代表的なものを表2に挙げておきます。ただし、過量投与も含めると相当数の薬によって痙攣を起こす可能性がありますので、ここにお示しした薬はそのほんの一部にすぎません。逆に、表の薬のなかには、発作を増加させる可能性はあるものの、きちんと発作がコントロールされている方では、臨床上問題がない薬もあります。また、リドカインのように、てんかん発作を止めるために使われる薬さえあります。さらに、因果関係ははっきりしないものの、副作用として記載されているものもあります。したがって、ここにあげた薬がてんかんの方全員に使えないというわけではありません。必要もないのに漫然と?用すべきではありませんが、どうしても必要な場合、注意しながらのんでいただくこともあります。

表2 てんかん発作のある方が注意すべき薬

カテゴリー 薬剤吊 商品吊 区分 対象(てんかん発作に対する推定作用および現象)
躁うつ病薬 躁うつ病薬 ルジオミール 禁忌 てんかん等の痙攣性疾患又は既往歴のある患者(てんかん発作誘発)
リチウム リーマス 禁忌 てんかん等の脳波異常のある患者(脳波異常を増悪させることがある)
イミプラミン イミドール
トフラニール
慎重投与 てんかん等の痙攣性疾患又は既往歴(痙攣誘発)
塩酸パロキセチン
水和剤
パキシル 慎重投与 てんかんの既往歴(てんかん発作誘発)
マレイン酸
フルボキサミン
ルボックス
デブロメール
慎重投与 てんかん等の痙攣性疾患又はこれらの既往歴(てんかん発作誘発)
精神刺激薬 ベモリン* ベタナミン 禁忌 てんかん等の痙攣性疾患(痙攣閾値低下)
抗精神病薬 クロルプロマジン ウィンタミン
コントミン
慎重投与 てんかん等の痙攣性疾患又は既往歴(痙攣閾値低下)
チオリダジン メレリル 慎重投与 てんかん等の痙攣性疾患又は既往歴(痙攣閾値低下)
筋弛緩薬 バクロフェン ギャバロン、リオレサール 慎重投与 てんかん及びその既往歴(症状誘発のおそれ)
麻薬性鎮痛薬 塩酸モルヒネ MSコンチン
アンペック
禁忌 痙攣状態(てんかん重積症)(脊髄刺激効果)
塩酸オキシコドン オキシコンチン 禁忌 痙攣状態(てんかん重積症)(脊髄刺激効果)
フェンタニル デュロテップ 副作用 間代性もしくは大発作型痙攣
塩酸コカイン 塩酸コカイン 副作用 振戦・痙攣等の中毒症状
局所麻酔薬 塩酸リドカイン キシロカイン 副作用 痙攣
麻薬性鎮咳剤 リン酸コデイン リン酸コデイン 禁忌 痙攣状態(てんかん重積症(脊髄刺激効果)
リン酸ジヒドロ
コデイン
リン酸ジヒドロコデイン
セキコデシロップ(合剤)
禁忌 痙攣状態(てんかん重積症(脊髄刺激効果)
消化管機能
促進薬
塩化ベタネコール ベサコリン 禁忌 てんかん(発作誘発のおそれ←副交感神経刺激)
ナパジシル酸
アクラトニウム
アボビス 禁忌 てんかん(痙攣を増強←副交感神経刺激)
口腔内乾燥
改善薬
セビメリン サリグレン
エボザック
禁忌 てんかん(発作のおそれ←副交感神経刺激)
気管支
拡張薬
アミノフィリン ネオフィリン
アルビナ座薬
慎重投与 てんかん(中枢刺激作用により発作)
テオフィリン テオドール
テオロング
スロービッド
ユニフィル
慎重投与 てんかん(中枢刺激作用によって発作)
カルバペネム系抗生剤 イミペネム・
シラスタチン
チエナム 禁忌 バルプロ酸Na投与中(バルプロ酸の血中濃度低下してんかん発作の再発)
慎重投与 てんかんの既往歴(痙攣、意識障害等の中枢神経症状が起こりやすい)
パニペネム・
ベタミプロン
カルベニン 禁忌 バルプロ酸Na投与中(バルプロ酸の血中濃度低下してんかん発作の再発)
メロペネム
三水和物
メロペン 禁忌 バルプロ酸Na投与中(バルプロ酸の血中濃度低下してんかん発作の再発)
慎重投与 てんかんの既往歴(痙攣、意識障害等の中枢神経症状が起こりやすい)
キノロン系
抗菌薬
ノルフロキサシン
エノキサシン
塩酸ロメフロキシン
レブロキサシン
トシル酸トスフロキサシンなど
バクシダール
フルマーク
バレオン
ロメバクト
クラビット
オゼックス
トスキサシンなど
併用禁忌
かつ/または
併用注意
痙攣(ニューキノロン系抗菌薬のGABA受容体結合阻害作用が
非ステロイド系鎮痛解熱剤NSAIDsによって増強)
抗癌剤 ビンクリスチン オンコビン 副作用 痙攣
メソトレキセート メソトレキセート 副作用 痙攣
抗ヒスタミン薬 塩酸シプロヘプタジン ペリアクチン 副作用 痙攣(抗コリン作用)
フマル酸
クレマスチン
タベジール
テルギンG
慎重投与 てんかん等の痙攣性疾患又はこれらの既往歴(痙攣閾値低下あり)
マレイン酸クロル
フェニラミン
アレルギン
ポララミン
副作用 痙攣
フマル酸ケトチフェン ザジテン
ジキリオン
慎重投与 てんかん等の痙攣性疾患又は既往歴(痙攣閾値低下あり)
ロラタジン クラリチン 副作用 てんかん(てんかん既往患者に投与後に発作発現の報告)
ロイコトリエン
拮抗薬
ブランルカスト
水和剤
オノン 副作用 痙攣
モンテルカスト
ナトリウム
キプレス
シングレア
副作用 痙攣

*ナルコレプシーにも有効、 NSAIDs:非ステロイド系鎮痛解熱剤

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強制正常化による精神症状

 難治のてんかん発作がようやくコントロールされ、脳波が正常化したと思ったら、易怒性、妄想、異常行動といった精神症状が出現することがたまにあります。強制正常化forced normalizationと呼ばれる現象です.てんかん発作がある方がまだましといったひどい症状を呈すこともあります。このため、発作コントロールと精神症状抑制といずれを優先すべきか悩ましい選択を迫られます。

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胎児催奇作用

 フェノバルビタール,フェニトイン,バルプロ酸,カルバマゼピン,ベンゾジアセピンを?用している女性から生まれてくる子供の奇形発生率は通常よりもやや高いことが知られています。奇形としては口唇口蓋裂、先天性心奇形、神経管閉鎖上全症候群などがあります。さらに顔貌異常、指のわずかな異常がみられることもあります。ただし、顔貌異常は成長とともに目立たなくなります。しかし、いずれにしても、抗てんかん薬を飲んでいる女性から生まれる子供が皆、奇形を伴っているというわけではありません。発生率は最大でも数パーセントです。抗てんかん薬を飲んでいない人からも奇形を持った赤ちゃんが生まれてくることがありますが、それに比べて、やや高いということです。抗てんかん薬を飲んでいると子供が産めないというわけではありません。

 抗てんかん薬の催奇作用の機序はまだよくわかっていません。薬が直接、胎児の脳の発達に影響を及ぼすのではないかという推測もなされていますが、確証はありません。数ある抗てんかん薬のうち、どれがいちばん安全かという問いに対する明確な答えもでていません。

 はっきりしているのは、多剤併用、高血中濃度で奇形発生率が高いことです。ですから、てんかんのある妊娠中の女性は、できうる限り単剤で、必要最小限の血中濃度によって発作をコントロールすることが大切です。

 しかし、妊娠中は発作を押さえることも重要です。ですから、ある程度の多剤併用、血中濃度維持が必要となることもあります。このあたりは、かなり難しい判断が要求されます。薬をきちんと飲み続けることによって、てんかん発作の悪化が防止され、発作によってもたらされる流産、早産の危険性も低下するからです。

 抗てんかん薬の中で催奇形性に関して一番問題視されているのはバルプロ酸(VPA)です。とくに、二分脊椎などの神経管閉鎖上全症候群(神経管は胎児期にみられる脳・脊髄のもとになる筒状の組織です。神経管が筒状にうまく閉鎖されないと、脊髄を包む腰の骨や脳を被う後頭骨が開いたままになったり、脊髄や脳そのものの形成がうまくいかなくなったりします)を有する子供が生まれる危険性が高まることが知られています。神経管閉鎖上全症候群の発生率は0.1-0.2%ですが、妊婦さんがバルプロ酸を?用している時、発生率はその10-20?、すなわち、1-4%になると報告されています。さらに最近、バルプロ酸を?用していたお母さんから生まれたお子さんの3歳時の知能指数が他の抗てんかん薬を?用していたお母さんから生まれたお子さんの治療指数より若干(知能指数として9ポイント、平均IQ91)低いという報告もなされています(NEAD Study Group. Cognitive function at 3 years of age after fetal exposure to antiepileptic drugs.N Engl J Med. 2009 16;360:1597-605)。ただし、この研究に関しては、いろいろ問題点も指摘されています。それでも、米国などでは、専門家の意見として、妊娠の可能性のある女性にバルプロ酸を処方しないよう推奨しています。しかし、妊娠の可能性のある女性のバルプロ酸?用を絶対禁忌にすべきかどうかに関しては今も世界の専門家の間で意見が分かれています。発作コントロール、副作用などの点から、他の抗てんかん薬には代え難いてんかん患者さんが存在するからです。また、前にも述べましたように、バルプロ酸と同等の効果を示す他の抗てんかん薬がバルプロ酸に比べ催奇形性が低いという絶対確実な証拠もいまのところありません。

 バルプロ酸の催奇形性は、?用量が1000mg以上、血中濃度が70μg/ml以上、あるいは、フェニトイン(PHT)やカルバマゼピン(CBZ)との併用時、高まることが知られています。したがって、バルプロ酸?用時は、フェニトインやカルバマゼピンとの併用を避け、血中濃度を低めに保つことが推奨されます。しかし、それもかなわぬとなれば、他の抗てんかん薬への変更を余儀なくされます。ちなみに、バルプロ酸?用時、もっとも問題となるのは毒性の強い4-en-VPAというバルプロ酸の代謝産物の一つです。徐放剤ではこの代謝産物の産生が押さえられるので、バルプロ酸の?用を続行する場合、徐放剤のほうが望ましいともいわれています。このことは、バルプロ酸による肝機能障害がある場合にも当てはまります。

 もう一つ、抗てんかん薬の催奇形性に関連して、葉酸が注目されています。葉酸はビタミンM、ビタミンB9とも呼ばれるビタミンの一種です。タンパク質のもとになるアミノ酸や遺伝子のもとである核酸の産生に必要な補酵素で、胎児の成長のためにタンパク質や核酸の必要量が増大する妊婦さんでは、どうしても、上足気味になります。妊娠した方では一日0.5mg以上摂取することが推奨されていて、葉酸を豊富に含む生野菜、果物、レバーなどを意識してたくさんとることも大切です。事実、二分脊椎といった神経管閉鎖上全症候群は葉酸を十分摂取することによって発生率が低下することがわかっています。一方、抗てんかん薬の多くはこの葉酸の濃度を下げ、奇形発生頻度を高める可能性が指摘されています。このため、抗てんかん薬を?用している妊婦さん(もしくは妊娠の可能性のある女性)には葉酸?用が推奨されています。ただし,葉酸投与によって抗てんかん薬?用母体からの奇形発生率が確実に下がるというデータは、まだ、でていません。

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新生児への影響

 胎児の抗てんかん薬血中濃度は妊婦さんの血中濃度と同等かそれよりもやや高いくらいだとされています。このため、フェノバルビタールやベンゾジアセピン系薬剤を?用しているお母さんから生まれたお子さんでは嗜眠傾向がみられることがあります.また,こうした薬剤が体内から消えていく際に、多動,振戦といった「離脱症状《もみられます.さらに,フェノバルビタール,カルバマゼピン,フェニトインではビタミンK欠乏による凝固障害が起きることがあります。このため,妊娠後期のビタミンK補充が推奨されています.

 抗てんかん薬は乳汁に漏れ出ることがあります。とくに、血液内で血中タンパクとあまり結合しない(タンパク結合率が低い)抗てんかん薬は、乳汁に漏れ出やすいことが知られています。ですから、問題となる抗てんかん薬は蛋白結合率の低いフェノバルビタール,プリミドン,エトサクシミドなどです.しかし,母乳栄養の重要性を考えれば,こうした薬剤を?用しているお母さんでも,十分な監視下、母乳をあげた方がよいと思われます。

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主要抗てんかん薬の副作用

 抗てんかん薬の比較的頻度の高い副作用,あるいは,頻度は低くとも重要な副作用を表1にまとめてあります.しかし、繰り返しになりますが、薬の副作用は無限にあります。表にあるのはその中の、ほんの一部にすぎません。

 以下に,主要抗てんかん薬の副作用のポイントをかいつまんで述べておきます。

a.フェニトイン

 フェニトインの治療域は狭く,血中濃度が治療域上限の20μg/mlをこえると,まず間違いなく眼振,嘔気,失調などの副作用が現れます.中毒量が長期にわたると小脳プルキンエ細胞が脱落して小脳萎縮をきたすことさえあります(図2).しかも,やっかいなことに、この治療域でフェニトイン代謝は飽和状態に達してしまい,わずかな?用量の変化だけで血中濃度は大幅に変動します。10mg程度増量しただけで、成人でも、あっという間に、血中濃度が治療域上限を突破して副作用がでてしまうことがあります。このため、フェニトインの場合には血中濃度が治療域にはいると、頻回に血中濃度を測定して、量を増減する必要があります。

 

b.フェノバルビタール

 フェノバルビタールには鎮静作用があります。ですから、ベンゾジアセピン系薬剤同様、治療域でも知的低下,行動異常をきたす可能性があります。このため、フェノバルビタールの?用はなるべく避けるべきとされています。しかし,一方で、必要以上にフェノバルビタールを忌避すべきではなく、その有効性を活用すべきだという主張もなされています.

(a)7歳

(b)28歳

図2 28歳男性 フェニトインによる小脳萎縮

3歳時, 交通事故による頭部外傷のため左優位の痙性四肢麻痺,知的障害,難治てんかんが残存した.21歳の時,痙攣重積で入院し,それまで?用していたアレビアチが200mgから300mgに増量になった.この後,発作は月一回程度になったが,歩けなくなり,振戦,眼振もみられるようになった.血中濃度は37μg/mlと治療域上限を超えていた。7歳時(a)のCTに比べ28歳時(b)のCTでは小脳脳回が目立ち,小脳が萎縮していると考えられる.

 その有効利用の1例が、フェノバルビタール大量療法です。フェノバルビタールはフェニトインと異なり血中治療域が広い薬です.一応、血中濃度30μg/mlが治療域上限とされていますが,てんかん発作重積状態などでは血中濃度を344μg/mlまであげて治療した例も報告されています。それほどの高い血中濃度でも血圧低下はみられず,250μg/mlでも自発呼吸が保たれることがあります。フェニトインにおける小脳萎縮のような構造的変化は相当高濃度でもフェノバルビタールではでないのです.このため、きわめて難治で、生命の危険も脅かすような発作にフェノバルビタールを大量にもちいて治療するのです。もちろん,これほどの高濃度では知的低下などの副作用は避け得ません。しかし、一時しのぎとしては有効な治療法です。

c.バルプロ酸

 歴史的にバルプロ酸の副作用としていちばん問題となったのは致死性肝障害です。さらに、前にも述べました、胎児催奇形性(とくに神経管閉鎖上全症候群)についてもさまざまな報告がなされました。

 バルプロ酸による致死性肝障害は多剤治療を受けている2歳未満の子どもにみられることのある、まれな副作用です。肝機能障害を伴う灰白質異常症などの先天性疾患をもっている乳児に起きやすいことが知られています。投与開始後6カ月以内にみられることが多く、発熱、嘔吐、顔面浮腫、筋力低下、発作頻発で発症します。?薬開始前から肝機能異常(正常値の3?以上)がある赤ちゃん、代謝疾患の家族歴があるお子さんへの投与は避け、3歳未満の子どもでバルプロ酸を?用する場合、できる限り単剤投与を保つことが推奨されています。

 胎児催奇形性については上に述べましたので、省略します。

 それ以外に比較的よくみられる副作用は、脱毛、食欲増進、メタボ腹、血小板減少、高アンモニア血症です。いずれも、薬を中止しなければならないほどひどいものではありませんが、食欲増進による肥満などは、度を超すと、他の抗てんかん薬への変更を考慮する必要が出てきます。眠気もよくみられますが、その際注意すべきは、フェノバルビタールとの併用です。バルプロ酸はフェノバルビタールの代謝を阻害、フェノバルビタールの血中濃度を20%前後上昇させ、結果として、眠気を誘発していることがあるからです。

 さらに、バルプロ酸は最近、双極性障害(躁うつ病)の治療薬として用いられていることも頭の片隅に入れておいた方がいいでしょう。気分安定剤として用いられますが、とくに躁状態に対して有効だとされています。この薬によって気分の変動が起こりうることは留意すべきで、実際、ときとし、「人格がかわった《ようになる方がみえます。

d.カルバマゼピン

 ?用開始時、低濃度であっても眠気,ふらつきなどの副作用がでやすいことは知っておいてください.私も、昔試しに、少量飲んでみたら、数日、ふらつき、眠気が続き、ビックリしたことがあります。しかし,どうやら「慣れ《が生じるようで,数ヶ月すると、治療域では、そうした副作用はみられなくなります.

 それに、この薬には,酵素自己誘導といって、自身を体外に排出する酵素を肝臓に作らせる作用があります。そのために、同じ?用量であっても、最初の半年ぐらいは、血液の濃度がどんどん下がっていきます。最初の半年ぐらいは、ときどき血中濃度を測定しながら、?用量を挙げていくといった調節が必要なのはこのためです。

 カルバマゼピンはフェニトインにくらべ副作用は少なく効果は同じだというので,成人では、部分発作の第1選択薬として推奨されてきました.しかし,薬疹の出現が比較的高いこと,一部のてんかんでミオクロニー発作や欠神発作を誘発することが問題視されるようになっています.また、まれですが、長期連用で上整脈をきたす可能性も示唆されています。もともと上整脈のある人、あるいは、高齢の方には注意が必要です。

 しかし、その一方で、カルバマゼピンは長期?用によっても鎮静作用がでにくく、精神面、行動面への副作用が少ないということで、部分発作には好んで使われています。また、胎児への影響が比較的少ないとされています。

e.ベンゾジアセピン系薬剤

 特異反応による副作用が少なく,他の抗てんかん薬で薬疹が出た場合,安心して使うことができるという点で、ありがたい薬です.しかし,鎮静作用や唾液過多などは比較的高頻度にみられますし,また,「慣れtolerance《による発作コントロールの低下が起きやすいのも困りものです.

f.ゾニサミド

 小児では発汗減少がよくみられます.夏など、汗がでないために熱が体にこもって、顔が真っ赤になることもあります。しかし、ゾニサミドによって汗腺の構造がおかしくなるというわけではないようです。また、熱がこもるといっても、それによって熱中症になってしまうということもありません。多くの場合、しばらくすると消失していきます。しかし、夏など、一応注意が必要です。

 日本ではあまり問題となっていませんが,欧米では腎臓へのカルシウムの沈着、腎石灰化が注目されています.なぜ、欧米でだけ問題になっているのかよくわかりません。ただ、もともと、一般人口の腎石灰化症の頻度が日本に比べ欧米で高く,これが,ゾニサミドによる腎石灰化の頻度にも反映しているのかもしれません.アルカリ尿,高カルシウム濃度尿が危険因子として指摘されています.

g.エトサクシミド

 悪心,胃痛,食思上振などの消化器症状が比較的多くみられます。しかし、しばらくするとなくなってしまうことがあり、その場合は,?薬継続可能です.眠気も時々みられますが,これも一過性のことが少なくありません.頭痛が時として問題となることもあります.きわめてまれですが重大な副作用として、再生上良性貧血があります。

h.トピラメート

 トピラメートは他の抗てんかん薬の代謝にあまり影響しないので、併用剤として用いても、他の薬剤の副作用を増強したり、抗てんかん作用を減弱させたりといった心配をしなくてすみます。しかし、その代わり、トピラメートを開始して体調がおかしくなれば、まず間違いなくトピラメートのせいということになります。

 トピラメートの副作用としては、他の抗てんかん薬と共通する中枢神経抑制作用、炭酸脱水酵素抑制作用に関連したもの、そして、体重減少がよく知られています。中枢神経抑制作用としては、言語流暢性障害がトピラメートに特異的です。これは、適切な言葉を見つけだすのに手間取って、うまく文章として喋ることができなくなる副作用です。ただし、発語が特異的に障害されるというより、全般的な認識速度の低下によって言語流暢性障害は起こると考えられています。炭酸脱水酵素抑制作用に関連しては、しびれなどの異常感覚と尿路結石があります。さらに、身体を酸性に傾けるために、代償性に過呼吸が生ずる可能性も指摘されています。

 体重減少の原因はよくわかっていません。肥満気味の人に多く、治療開始3か月から始まり、1年半ほどでピークに達するという報告もあります。

 催奇形性の報告は、ほとんどなされていません。

i.ギャバペンチン

 比較的安全な薬で、自殺目的で100グラム近く?薬してしまった例でも、後遺症なく回復しています。また、急激な断薬によってけいれん重積発作を誘発することもありません。

 ギャバペンチンはラモトリジン同様、向精神薬としても使われています。また、糖尿病などにみられる神経原性の疼痛に使われていますし、もともと、バクロフェンのような痙性を緩和する薬として開発されたので、緊張を和らげる薬としても使われています。さらに、舞踏運動、振戦などの上随意運動、偏頭痛などにも使われています。このため、副作用についても、そうした抗てんかん薬以外の用法によるものも報告されています。

 他の抗てんかん薬同様、もっとも多い副作用は中枢神経抑制作用による傾眠傾向とめまいです。

 催奇形性の報告はなされていません。

j.ラモトリジン

 もっとも注意を要するとされているのは、薬疹です。スティーブン・ジョンソン症候群のような入院を要するひどい全身性薬疹が成人で300例に1人、小児で100例に1人発生するという報告もあります。ただし、これは、他の薬剤と併用した場合で、新たに発症したてんかん患者さんに単独で使用した場合、カルバマゼピン、フェニトインなどと比べ、薬疹の率は変わらないという報告もなされています。ラモトリジンの薬疹は、?薬開始時、急激増量時、バルプロ酸との併用時にでやすいことが知られています。したがって、少量から始めて、ゆっくり増量し、とくに、バルプロサントの併用時には注意深い導入、増量を心がけると、発生頻度を減らせる可能性があります。薬疹以外には、めまい、嘔気、頭痛、脱力などの副作用が知られています。抗てんかん薬といえば、どうしても、中枢神経を抑制する方向に働くので、眠気などの鎮静作用がつきものです。しかし、ラモトリジンは他の抗てんかん薬に比べ、鎮静作用が少ない薬です(ただし、他の薬と併用すると、血液濃度を上げたりして、眠気を誘発することはありますが)。このため、米国などでは高齢発症てんかんに最適の抗てんかん薬とされています。

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参考文献

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